彼はもう此処には居ないけれど

ガゼル独白
短文。

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ずっと彼を見ていた
何を見ても彼に繋げた

太陽のようで
日の光に包まれるようで
広い空間に立たされるようで

安心と恐怖を味わった


呼んでも届かない

叫んでも響かない

泣いても聞こえない

笑っても笑い合えない


一人では広く感じる空間
どこを見ても彼は居ない

何度も通り過ぎたあの夏の日
君の背中を追った夕陽の中
私は確かに君の手を掴んでいた

何度目か数えられない冬

私の手は空を掴む


彼はもう居ないのだと、触れられない手を見つめて実感する



一人で立ち竦む中　落ちる雪はただ冷たく光るだけだった