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2011.02.21 Mon


基涼

多分死ネタ

少し直接的な言葉がありますので注意。
色々な説明を省いているので何がどうなっているのかは好きに補完してください。



--------

どうしてこんなことになったのかはわからない。
見渡す限りガラガラで、誰も乗っていない電車内に座ったまま俺は溜息をつく。
他の車両にはまだ人がいるのだろうか。


俺はこれから死ぬわけだけれど、残りの時間を一体どう使うかで悩んでいた。
この電車がどこかにぶつかるか落ちるかするまで数時間、もしくは数十分。
こんな何もない電車内で何をしろと言うのだろう。
ねぇ、

「ガゼル」

俺の横で同じように座っていたガゼルに声をかけると返事こそくれないものの、視線をこちらに寄越す。
俺はただただ暇で、絶望的に残されたこの時間を浪費するためには自分以外の誰かの協力が必要なんじゃないかと思った。
泣いて叫んで助けを呼ぶか、全てを諦めて景色でも見るか、諦め悪く走行中の電車からの脱出を図るか、お喋りでもしてただ時間を潰すか、
思いつくことは全て実行する気になれなかった。これも運命という奴だろう。この電車が酷い止まり方をするまで、俺はここにいるしかないのだ
俺が声をかけたおかげでこちらを見ていたガゼルに視線を戻せばとっくに別の方向を向いていた。

「ねぇ、ガゼル」

再度声をかければ今度は少し嫌そうにこちらに顔ごと向けた。
彼と合わせた俺の笑顔はいつもより甘かったと思う

「セックスしようか」

それだけ言うとガゼルは呆れたように鼻を鳴らしてから誰も座っていない向かいの席を見た。
流れる景色に現在の状況を忘れそうになりながらもガゼルの言葉を待つ。
暫くすれば「馬鹿なのか君は」とだけ返ってきた。それはまぁこんな状況で言うことではなかったが

「いいじゃない。誰もいないし」
「そういう問題じゃない」
「どういう状況ならよかった?」
「まず電車の中というのが非常識だ。」

男同士で既に常識も何もないけどね。という言葉は呑み込む

「加えて、死にかけていなければまだよかったね」
「死にそうな状況でセックスっていうのも悪くないと思うけど」
「君は頭がどこかおかしいよね。本当に。」
「酷いなぁ、ガゼルは暇じゃないの?」
「暇じゃないといえば嘘だ」

だからと言って君と盛る気分ではないよ。ガゼルがこちらを見ないまま続けた。
最後なのに。君と一緒に死ぬならそういうのでもいいかなと思ったんだけれど。残念だなぁ

「じゃあ何をしようか」
「黙って座っていればいい」
「やだなぁそんな死に方」
「男とセックスしながら死ぬ方が嫌だよ」
「ガゼルとならいいよ別に。」
「私が嫌なんだ」

不満そうな顔をしてみせたがガゼルはそもそもこちらを向いていなかったので無意味だった。
さて、あと一体どれだけ時間があるだろう。
そもそもこんな事になった意味がわからない。
居眠りしていた俺たちが悪いんだろうけどね。アナウンス聞き逃すんだもの

「まさかこんな所で死ぬことになるとはね」
「まぁ思えば凄い人生だったよ」
「そうだね」
「ガゼル、後悔はしてる?」
「それはね。こんな電車に乗らなければよかったとは思っているよ」
「俺は自分で死ぬ手間が省けたしよかったと思ってるけどね。もう14年も生きたし、ガゼルを道連れにできるしね」
「最低だね」
「そうだね」

雲行きが怪しくなってきたね。そうガゼルに言えば彼は窓へ目を向ける。
俺はそれとは関係の無い言葉を紡ごうとした彼の口に視線を向けた

「、ヒロト」


電車の先頭部分で嫌な音がした。

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