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2011.06.09 Thu


南涼

死ネタ注意。
 



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何から何まで白い部屋に押し込められた風介を見て、俺が最初に思ったのは「色味が無い」ということだった。
同時に、なんか駄目そうだなとも。

車と正面衝突だなんて間抜けだな。風介に言っても反応はなかった。
打ち所が悪かったらしい頭にぐるぐると巻きつけられた包帯を見るとついつい笑いがこぼれてしまう。そう、打ち所が悪かったのだ。

意識がハッキリとしないまま寝たり起きたりを繰り返す風介を見舞う生活も四日目だ。
久しぶりに意識のハッキリした風介と話す。ハッキリといっても、それは昨日までに比べればという話で、風介の言葉は途切れ途切れだった。
見舞いにとヒロトから渡されたりんごを風介に見せれば、何か言うわけでもなく一度さらりと撫でるだけだった。

「人は、死ぬ前に、今まで嫌いだった全てを好きになると、聞いたことがあるよ」
「あっそ。」
「それには、とても、納得したね」
「そ。」
「だって、大嫌いな君が、こんなにも好きで、たまらない」

視線をりんごに向けたまま、まるで今から死にますとでも宣言するかのように風介は言った。
俺にどんなリアクションを求めているのか知らないが、うんざりだ。

「俺は嫌いだよ。お前みたいな馬鹿。」

にんまりと笑った風介を気味悪く思いながらりんごに目をやる。食わねーならくれねぇかな。それ。

瞬きをした一瞬のうちに、風介の手に握られていた赤い球体が床に落ちていた。
空気の震える白い部屋に残ったいきものは、気づけば俺とその球体だけになっていた。

目から零れ落ちるものが喜びなのか悲しみなのか理解するのに、例えばりんごを一つ、完食するくらいの時間が必要だと思った。

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