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2011.05.27 Fri
グランとガゼル
短い
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ゾッとした。
ヒロトが眠っていた。
借りていた辞書を返しに部屋まで来たら、ノックの返事はなかったが鍵が開いていた。
無遠慮に扉を開けてズカズカ入っていったところ、布団に横たわっているヒロトを発見した。
しかしこの部屋は恐ろしいほどに生活感がないな。こいつはここで寝泊りしているんじゃないのか。寝泊りするためにしか使っていないのか。
そんな部屋で眠るヒロトには人間味が無く何か別のもの、例えば、妖怪とか、そんなもののように感じられた。
辞書を返却してとっととこんな部屋出よう。そう思って振り返ると、薄く細められた目がこちらを見ていた。
いつ起きたんだ。と多少怯むとヒロトはクスリと笑った。
「死んでるのかと思った」
冗談と本気を半分にして言えば、相手は笑みを深くした。
「じゃあ殺してよ」
そう言ったヒロトの手が私の手首を掴んだ。
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